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特集:北欧旅女通信 vol.05

フィンランドに着いた。

知らない間に眠っていたようだ。

船は、あまり揺れなかった。

厳密には、スタッフのおばさんがドアの鍵を(勝手に)開けて「朝ごはんよぉー!!」(何語かわからなかった)と叫んで、バタン!と閉めて、それで目が覚めた。なんて船だよ。面白いな。半分眠りながら食べた朝食もコーヒーも紅茶も、実はこの旅で一番美味しかった。ありがとう、シリアライン。スタッフはふくよかでニコニコしたおばさんが多くて、こちらまで笑顔になる感じ。

船着き場から最寄り駅のトゥルクまでバスに乗る。卒業旅行中の日本人大学院生と話すが、やっぱり建築学部の子たちだった。就職も決まって明るい顔をした彼女たち、ムーミンゆかりの地・ナーンタリに行くそうだ。明るい貴女達に幸あれ。季節外れのフィンランド、観光客はいるのだなと思った。しかしスウェーデンと違って、どこかうら寂しい印象。

JRじゃなくてVR。簡素だけどカッコいい駅。

新幹線のような特急列車。フィスカルスの最寄り駅Karjaa(カルヤー)まで向かう、約1時間

今回の旅の目的のひとつである、フィスカルス村。デザイン村と呼ばれ、600名の村民の多数がアーティストだという村だそうだ。ドイツの巨大な見本市「アンビエンテ」に出展しているシーラカンス食堂の小林さんが、ドイツ帰りに遊びにくるというので、我々もそのタイミングで便乗することに。車内は快適で、フィンランド来ちゃったね〜ついにね〜。とか適当なことをグダグダと話していたらあっという間に到着してしまった。

Karjaa駅に到着するが、インフォメーションが開いていない。できれば駅前でレンタカーも借りて...などという目論みは叶うはずもなく、英語の全く通じない掃除スタッフの方々に一生懸命尋ねるも撃沈。仕方ないので周りを見渡してみると、線路を越えた向こう側にお店が並んでいる様子が見えたのでそちらに向かってみる。

この日は小さいマーケットが出ていた。籠を手作りするおじさんに尋ねることに。英語が通じる。レンタカーはどこですか?と聞いてみると「俺はこの街の人間じゃないからわからないんだ。ちょっとまってね、そのへんの人に聞いてみるから」というわけでこのおじさん、手当たり次第、そこいらを歩くおばさまなどに声をかけ始めた。「おーい、この辺のレンタカー屋知ってるかい?!」「あたしゃ知らないねえ」「さー俺も知らねえな」みたいなやりとりを数人と行う。すると、靴屋から眼鏡で素敵な感じのおじさまが「俺の友達がレンタカーやってるから、そこまで連れていってあげるよ」と!!マジですか、超LUCKY!!

「あーもしもし?俺。...うん、そう、じゃ、頼むよ」なんて言っている感じ。カルヤーの駅の靴屋のご主人のタピオさん、命の恩人です、紳士!今思うと、彼が居なかったら私たちは路頭に迷っていたと思われます。閑散期ということでバスもタクシーも来ない、なかなかの田舎だったのです。

青く光るタピオズminiに乗り、10分程。着いたのは....レンタカー屋でもなんでもなく、車の塗装工場。私たちの顔にはハテナマーク。どういうこっちゃ?でも、レンタカーが1台あるらしいのです。マジで?でもじおじさんはすごく親切。手続きを進めて行くうちに、大変な事実が発覚しました。

そう、全国をキャラバンで飛び回るヨシコジャパン号は何を隠そう”オートマ”車。

彼は一瞬険しい顔つきになり、固まりながらこう言いましたね。

「But we only have the manual cars.(僕ら、マニュアル車しかないんだけど)」

国際免許証、ちゃんと持ってきましたが...「オートマだけなの?」に凍る我々

「ちょっとこっちに来て。

レッツ・プラクティス(練習しよう)。

君(マツモトに向かって)はここで休んでて」

はい、待ちますとも。いつまでも。

しかし、マジで?2月のフィンランドで、いきなりマニュアルの練習?

そんな日本人、後にも先にもヨシコジャパンが最初で最後でしょ?

約1時間、たっぷりみっちりグルグルと工場の周りを永遠に練習していました。切り替えがうまくいかない時に「ガクン!」となるのですが、見てたら徐々に改善している。すごいのよ、ヨシコジャパン。本当に素晴らしいです。1時間後にはほとんど習得していました。異国の我々にレンタカーのサービスも提供してくれて、color teamのおじさん、ありがとう!

思いのほか安全運転で「右走る右!」「右!」 「はいカーブきたよ!右折!右走りながら!」と最低限の交通規則を二人で口走りながら、工場から30分もしないうちに、今日のお宿のHotel Tegelに到着。1800年代に建てられた食卓用のフォークやナイフなどの工場だったそうです。リノベーションされて綺麗な建物。

◎Hotel Tegel

一泊ツインふたりで135ユーロ(約15000円)、盛りだくさんな朝食付き

そこに荷物を置いて「ヤマダさんっていう木工職人が近くに住んでいるから会いに行こうよ」とのこと。山梨の木工職人さんのお知り合いだとか。しかしこんな辺境に日本人が?と思われるかもしれませんが、結構たくさんいらっしゃるみたいです。住所を見てここかな?ここかな?と車でたまにガクンガクンとなりながら探しに行くが、なかなか見つからない。

と、その時、目の前に子供のような男性が自転車に乗って向かってくる・・・あ!日本人だ!「ヤマダさん!」「はい、山田です」と、案外あっさり見つかった。自宅に忘れ物をしたので取りに行ってくるので、工房に先に行ってて下さいと案内される。

山田さんのアトリエ。昔の煉瓦造りでとっても頑丈そう。

工房に行ってノック。「ハロー?」と優しそう〜〜〜なお兄さんが登場。事情を説明して中に入れてもらう。すごい!木工工房だー!!お兄さんの名前はヘイキさん。「じゃあヘイちゃんな」「え?」みたいなカジュアルなノリでニックネームを決めるヨシコ。

ヘイチャンからいろいろと説明を受ける。そして山ちゃんが戻ってきた。もうこの時点で山ちゃんヘイちゃんのコンビネーション。山田さんは慶応大学工学部を卒業後、どうしても建築やデザインの世界に入りたくて、タンペレ工科大学に留学をしたそうです。なぜフィンランドを選んだんですか?の質問に「当時は学費が無料だったんです」。なるほど!

2006年にはEU-Japan デザインコンペティションに入賞、2011年にはフィンランド ハビタレデザインコンペティションでは一等で入賞。何を作ったかというと「厠(かわや)」だそう。サウナで有名なフィンランドならではといったところです。今は木工所で家具の製作を中心に行っていらっしゃいます。この工房の落ち着く感じ、本当に良い時間でした。ラップランド出身のヘイちゃんの入れてくれたコーヒーはとっても美味しい。やっぱりトナカイってしょっちゅう食べるの?の質問に「いや、そうでもないよ」だってさ。

◎山田吉雅さん

UPP

そこから、ヤマちゃんに教えてもらった駅前のホームセンターへ行く。スウェーデンのホームセンターより小さめの町のお店といったところだ。でも、フィンランドバーチ(合板)が有名だからきっと木材はたくさんあるのでは?の予想が・・・あたるといいな。

外に出てみると、思ったより暖かいフィンランドの夕暮れ。のなかにこれでもかと並ぶ、材木の山!山!山!ヨシコさんに立って頂いた高さからわかるように、切りっ放しの木が積まれておりました。これは白樺の木じゃないけど、白樺の木もありました。まさかこれも売り物なんでしょうか?

その後、町を少しぶらぶらしようか。と辺りを見回すと、珍しく晴れているフィンランドの夕暮れは、薄紫の空に包まれたなかに光るおぼろ月夜がとてつもなく、ため息をもらす二人。

オーロラとかって、北のほうに行かないと見れないみたいなんだけど、それに匹敵するような美しさがそこにはありました。少しさびれた感じの街並みに似合う。そう、本当にアキ・カウリスマキの世界観がそこにはありました。

適当に入ったピザ屋の看板の店は、東欧な雰囲気のお店。英語がほとんど通じない。チキンソテーをいただきましたけど、ちょっとしょっぱかったな。後日、再来店を果たすのはこの時は知らなかった。

宿に戻って、明日からフィスカルスを満喫しよう、そうしよう。と話していたら、シーラカンス食堂の小林さんがいらっしゃった。アンビエンテ(ドイツの見本市)から直行でヘルシンキからレンタカーで来られたとのことで相当お疲れモード。にもかかわらず、ロビーでみんなでお酒をいただいて大変楽しい夜となりました。

ありえないほど豪華な顔ぶれを前にヨシコさんがトークを繰り広げます。奥からロフトワーク代表諏訪さん、右は同社more than projectのプロデューサー秋元さん、一番右はシーラカンス食堂の小林さん、素敵な写真はカメラマンみーちゃんです!

さあ、明日はいよいよフィスカルスを散策です!

写真と文/まつもとまゆみ

◎テツヤジャパンはロシア白樺耐水合板の専門商社です◎

◎本棚など簡単な家具もお気軽にお作りします◎

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